韓国の老人ホームで働く「わたし」です。
就職して約2か月経ちました!
老人ホームで韓国人の介護士やお年寄りが使う言葉の聞き取りはとてもむずかしいです。
若者があまり使わない言葉が頻出するからです。
職場で覚えた言葉を韓国人の夫の前でつかったら、急に韓国語がババ臭くなった!と言われました(笑)
面白いなと思ったのが、朝鮮王朝の上位身分制度の両班(ヤンバン)や令監(ヨンガン)という言葉が現代も普通に使われていることです。
両班(ヤンバン)は職場で1日50回くらい聞く頻出単語。
この記事では朝鮮時代に生まれた両班(ヤンバン)、冷監(ヨンガン)のという言葉が韓国の老人ホームでどのように使われているかご紹介します。
両班(ヤンバン:양반 )
朝鮮王朝時代の両班の持つ意味
両班(ヤンバン)は、朝鮮王朝で上位3%に属する貴族階級のことです。
朝鮮王朝で王の次に高い身分として、享受する権利は全て享受するも納税・兵役等の義務は逃れ、自分より下の階級の者から常に収奪を繰り返していました
朝鮮時代の民は「朝鮮の官人はみんなが盗賊」といい、両班はほとんどの場合、嫌われる存在でした。
一言でいうと嫌な奴!
そんな両班という言葉が2023年の韓国の老人ホームではどのように使われるのでしょうか?
現代の両班の使われ方
両班(ヤンバン)は「人」を指す代名詞です。
人と言っても、「両班」を使うときは「身分が高いあの人」という意味で日本語で言う「あの方」、韓国で言う 분 という言葉に相当します。
実際の介護の現場でもこんな風に使われます。
ペヨンジュンさん、あの方は今日は食事をあまり食べなかったわ
배용준어르신 저 양반 오늘은 식사를 잘 안 드셨어요.
その他にも이 양반 그 양반 と言った風に使われます。
私は両班という朝鮮時代の身分制度をうっすらと知っていて、両班にいいイメージを抱いていなかったため最初聞いたときは両班でご老人を指すのは「悪口」なのかなと思っていましたが、単純に現代では「あの方」という意味で使われています。
「あの人(저 사람)」というより角が立たず、両班は相手を敬ったような言い方になります。
それから今となっては笑い話ですが、私は同僚が両班(ヤンバン)と呼ぶご老人の先祖が本当に両班の家系だと思ってその人に対して恭しい気持ちになっていましたが…
金さんも両班?
え、朴さんも両班?
その隣の鄭さんも両班?
この部屋の人はみんな両班なの???
上位3%の身分のはずなのに、
この老人ホームには両班が多すぎるだろ!!!
と頭の中がハテナでいっぱいに…
ついに同僚に「『両班』ってどういう意味ですか?」と聞き、両班がただの「あの方」という意味だと知り、ずっこけました。
しかし、朝鮮時代には庶民に徹底的に嫌われた両班という言葉が現代では「あの方」という意味を持つなんて驚きです。
両班を嫌いつつ、両班という超特権階級に多少の憧れと尊敬の念があるのかもしれません。
ちなみに韓国の若い人が両班という言葉を使っているのを聞いたことがありません。
韓国のママ友たちからは決して学べない韓国語なのだ~
令監(ヨンガン:영감)
両班よりも頻出ではないものの令監(ヨンガン)という言葉も老人ホームでは飛び交っています。
朝鮮王朝での令監(ヨンガン)の意味
令監(ヨンガン)も朝鮮王朝の位を指す言葉です。
令監(ヨンガン)は、王を交えた議論に参加することができる王朝のエリートで、次期大臣候補という高い位です。
現代の令監の使われ方
現代では、ご高齢の男性や老夫婦の妻が夫を呼ぶときの代名詞となっています。
実際にベッドで寝たきりのおばあさんが
夫が家で待ってるのに~
영감이 집에서 기다리는데
言っていました。
またある日、私がセクハラしがちな男性のご老人にうっかり手を握られたのですが、
それを見ていた同僚が「あなたのような영감님(高齢の男性)に手を握られて、この子がどんなに気まずいかわかりますか?」と注意をしてくれました。
以上の会話から영감(ヨンガン)は高齢男性を指し、夫婦間では旦那さんを指す言葉であると推測できます。
まとめ
両班(ヤンバン)にしろ、令監(ヨンガン)にしろ、韓国の老人ホームでは朝鮮王朝由来の言葉が今も飛び交っていることに驚きを隠せません。
518年も続いた朝鮮王朝が今も現代韓国に影を落としているということでしょうか?
日本で言えば「御三家」や「征夷大将軍」などを「あの人」の意味で使ってるようなもんだと考えると、なんかおもしろいんですけど。
日本ではこんなことありえないですよね。
老人ホームで覚えた言葉はたくさんありますが、本日は朝鮮時代の名残をもつ両班と令監をご紹介しました~
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